トータルフットボール
とーたるふっとぼーる
トータルフットボールとは、フィールドプレーヤー全員がどのポジションもこなせる流動的なサッカーを指す戦術概念である。オランダ語では「トータールフットバル」と呼ばれ、1970年代のオランダ代表とアヤックスが実践したことで世界的に知られるようになった。この戦術の核心は、ポジションの固定概念を排し、選手がピッチ上を自由に動き回りながら、空いたスペースを別の選手が埋めることで、常に最適な陣形を維持することにある。リヌス・ミケルス監督とヨハン・クライフ選手がこの戦術の発展に大きく貢献し、1974年のワールドカップでオランダ代表が披露したプレースタイルは、サッカー史に革命をもたらした。トータルフットボールには、全選手の高い技術力、戦術理解度、運動量が必要とされる。また、スペースの使い方、ボールポゼッション、プレッシングも重要な要素となる。この戦術思想は後に、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンなどのクラブに受け継がれ、現代のポゼッションサッカーやティキタカの基礎となった。トータルフットボールは単なる戦術ではなく、サッカーに対する哲学として今も影響を与え続けている。